歯科医院のイメージ

こんにちは、クリア総合歯科クリニックの入江です。

歯科医院に通院するとき、多くの方が「治療の痛み」や「見た目の改善」を意識する一方で、見えにくい部分である「感染対策」については意外とご存じありません。実は歯科医院では、血液や唾液といった体液に接触する機会が多いため、感染症のリスクが比較的高いといわれています。そのため、感染対策は欠かすことのできない取り組みです。

今回は、歯科医院で行われている感染対策の重要性と、具体的な取り組みについて詳しく見ていきましょう。

歯科診療と感染リスク

ウイルスのイメージ

歯科診療では、歯を削るときや抜歯、歯周治療などの処置中に出血を伴うことがあります。また、超音波スケーラー(歯石をとる道具)やタービン(歯を削るときに使う機械)を使用すると、唾液や血液が小さな飛沫として空気中に広がります。これらはエアロゾルと呼ばれ、空気中を漂うことで感染が広がるリスクがあります。

代表的に注意が必要な感染症には以下のようなものがあります。

・B型肝炎・C型肝炎:血液を介して感染するリスクが高い。
・HIV感染症:同様に血液を介して感染が成立する可能性がある。
・結核:空気感染するため、診療中の飛沫が問題となる。
・インフルエンザ・新型コロナウイルス:飛沫感染や接触感染で広がる。

このように、歯科診療は感染リスクがゼロではないため、国際的なガイドラインや国内の厚生労働省の指針に基づき、徹底した感染対策が求められます。

歯科医院での感染対策の基本原則

感染対策をする歯科衛生士

感染対策の基本は「標準予防策(スタンダードプリコーション)」と呼ばれます。これは、すべての患者さんの血液や体液には感染のリスクがあると考えて対応する考え方です。歯科医院でも、この考え方を基本に感染対策しています。

主な基本原則は以下の通りです。

・手指衛生の徹底
治療前後に石鹸やアルコールを用いた手指消毒を徹底します。グローブ(ゴム手袋)を装着していても、手指衛生は必須です。
・個人防護具の使用
マスク、グローブ、ゴーグルなどを着用し、飛沫や体液の付着を防ぎます。
・器具の滅菌、消毒
使用した器具は患者さんごとに洗浄・滅菌します。洗浄・滅菌できない器材は使い捨ての製品を使用します。
・環境表面の清拭
ユニット(治療台)やライト、ハンドルなどは患者さんごとに消毒用エタノールなどで清拭します。
・エアロゾル対策
吸引装置(口腔内バキューム)や口腔外バキュームを用いて、治療中に発生する飛沫をできる限り防ぎます。

歯科医院で実際に行われている感染対策

・滅菌と消毒
オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を用いて、130℃前後の高温高圧で細菌やウイルスを死滅させます。
・タービンやハンドピースといった精密機器を専用の滅菌器で処理
以前は十分に滅菌されていないまま再使用されることもありましたが、現在ではガイドラインで「患者さんごとに滅菌」が原則とされています。
・ディスポーザブル製品の活用
紙コップ、エプロン、注射針、グローブなどは使い捨て製品を使用します。
・口腔外バキューム
治療中に発生するエアロゾルを吸引する口腔外バキュームを設置している医院が増えています。当院でも口腔外バキュームを使用することがあります。
・換気や空気清浄機の導入
診療室全体の空気環境を清潔に保ちます。
・患者さんへの協力依頼
来院時の手指消毒や検温。当院では診療室の入り口にアルコール消毒液を置いています。

新型コロナ以降はマスク着用や体調確認票の記入をお願いする医院も一般的になりました。待合室での密を避けるために予約制を厳密に運用することも感染対策の一環です。

新型コロナウイルスと歯科の感染対策

2020年以降、コロナ禍によって歯科医院の感染対策はさらに強化されました。多くの患者さんが「歯医者は危険ではないか」と不安を抱いた時期もありましたが、実際には徹底した感染管理が行われており、歯科医院でのクラスター発生はきわめて少ないと報告されています。

これは、歯科がもともと厳しい感染管理を実施していたこと、さらにコロナ対策を上乗せしたことによる成果です。結果として、歯科医院は安全に通院できる医療機関であることが広く認識されるようになりました。

まとめ

歯科医院のスタッフのイメージ

歯科医療は、常に感染症のリスクと隣り合わせの現場です。そのため、滅菌・消毒、ディスポーザブル製品の活用、エアロゾル対策といった様々な取り組みが不可欠です。新型コロナウイルスの流行をきっかけに、歯科医院の感染対策は一層注目を集めるようになりましたが、これは決して一時的なものではなく、今後も継続すべき重要な姿勢です。

患者さんにとっても、安心して治療を受けられる環境が整っていることは大きな安心材料です。歯科医院を選ぶ際には、治療技術や説明のわかりやすさと同様に、感染対策への取り組みにも注目してみるとよいでしょう。

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