8020運動について
こんにちは、クリア総合歯科の入江です。みなさんは8020運動というのをご存じですか。8020運動とは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という目標を掲げたものです。この運動は、厚生労働省と日本歯科医師会が1989年に共同で提唱し、以来30年以上にわたり続けられています。超高齢社会を迎えた日本において、健康寿命をのばすことは重要な課題であり、その一環として8020運動は私たちのお口の健康を守るために大きな役割を果たしてきました。
8020運動の背景
かつて、日本人の高齢者は歯が抜けることを年相応として受け入れる傾向が強かったようです。しかし、歯を失うことは単なる見た目の問題にとどまらず、噛む力の低下、栄養摂取の偏り、さらには認知機能や生活の質(QOL)の低下に直結することが、さまざまな研究によって明らかにされてきました。
昭和の終わりから平成の始めにかけて、日本の高齢者の歯の本数は非常に少なく、80歳以上で20本の歯が残っている人はわずか数パーセントでした。その状況に警鐘を鳴らし、国民全体の意識改革と口腔ケアの実践を促すために、8020運動が始まりました。厚生労働省の調査によると80歳で20本以上残っている割合は
1989年 約7%
2005年 約25%
2016年 約40%
2022年 約51.6%
となっています。この劇的な増加は、私たちの意識向上、歯科医療の進歩、予防歯科の普及によるものです。
8020運動の目的
8020運動の最大の目的は、「生涯を通じて自分の歯で食べる楽しみを持ち続けること」です。歯は単なる道具ではなく、全身の健康と深く関わっています。20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を不自由なく噛むことができるとされていて、これが8020運動の名前の由来となっています。
この運動は、単なる啓発活動にとどまらず、学校教育、地域保健活動、歯科医療体制の強化など、幅広い分野で展開されてきました。その意義は、健康寿命の延伸、医療費の削減、そして高齢者の自立支援という点において、きわめて大きいです。
具体的な取り組み
子どものころからの口腔衛生習慣の確立は、生涯にわたる歯の健康に直結します。そのため、保育園・幼稚園から小中高校にかけて、歯磨き指導や定期健診が行われており、8020運動の理念は学校教育にも深く浸透しています。文部科学省の調査によると12歳のこどものむし歯の本数は
1985年 4.3本
2000年 2.4本
2010年 1.3本
2022年 0.7本
となっています。また、自治体や保健所、地域の歯科医師会によって、地域住民向けの講演会や健康フェアが開催され、歯と口の健康の重要性が啓発されています。特に「歯と口の健康週間」(毎年6月4日〜10日)は、8020運動を広くアピールする重要な期間となっています。
予防歯科について
以前は、歯科医院は「痛くなったら行く場所」とされていましたが、最近では「むし歯や歯周病予防のために通う場所」としての意識が広がっています。定期的なクリーニング、フッ素塗布、噛み合わせのチェックなどを通じて、歯を失わないためのケアが行われています。日本医師会の調査によると定期的に歯科医院を受診する人の割合は
1993年 約18%
2015年 約40%
2020年 約52%
となっています。最近よく耳にする予防歯科とは、「歯が悪くなってから治す」のではなく、「悪くならないように守る」ことを目指す歯科医療で、むし歯や歯周病などの歯の病気になる前に防ぐことを目的としています。また、高齢者施設でも口腔ケアを介護の一環として位置づけ、専門の歯科衛生士が定期的に訪問して指導・支援を行っています。また、飲み込む機能の維持や誤嚥性肺炎の予防にも、口腔ケアは重要な役割を果たしています。歯の健康と全身の健康の関連性も徐々に社会に浸透し、「オーラルフレイル(口の機能の虚弱)」という概念も普及してきました。歯を守ることは、健康な老後を送るための基礎であるという認識が高まっています。
今後の展望
今後の8020運動では、今まで重要とされてきた「歯の本数」に加え、「口腔機能の質」も重要視しています。たとえば、しっかり噛める力、話せる能力、飲み込む機能などを総合的に評価し、介護予防や栄養指導と連携した口腔ケアなどを行っています。
また、デジタル技術やAIを活用した口腔健康管理の普及も期待されています。スマートフォンを使ったセルフチェックアプリや、歯科医院と連携するオンライン相談サービスなどが、予防歯科の新たな可能性を開いています。
教育現場でも、より実践的な歯科保健教育を推進し、家庭や地域社会との連携を強化することが求められています。歯科医療人材の育成も含めて、国全体で口腔保健の推進体制を整備する必要があります。
まとめ
8020運動によって現在半分以上の人が80歳になったとき20本以上の歯がある状態になりました。これからも8020運動を進化させつつ、誰もが生涯自分の歯で噛める社会の実現を目指していくことが重要です。定期的に歯科医院を受診することでむし歯や歯周病を予防しましょう。
クリア総合歯科クリニック
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