歯科治療のイメージ

こんにちは、クリア総合歯科の入江です。

歯科医院でむし歯などの治療をするときには麻酔を使いますが、苦手な人も多いのではないでしょうか。

歯科治療で麻酔を使うことで治療中の苦痛を軽減し、スムーズかつ安全に処置を進めることができます。

その中でもアドレナリン(エピネフリン)が入っている局所浸潤麻酔薬は広く使用されています。アドレナリンには血管収縮作用があり、麻酔効果の増強および持続、出血の抑制に大きな効果をもたらします。

その一方で心血管系に影響を及ぼす可能性もあります。今回はアドレナリンの効果、注意点など見ていきましょう。

局所麻酔薬の分類

歯科で使用される局所麻酔薬は主にアミド型といわれるものであり、代表的なものとして

・リドカイン(リドカイン塩酸塩)
・メピバカイン
・アーティカイン(日本では一般的に「カルボカイン」「スキャンドネスト」などの商品名)

があります。

これらは麻酔作用がありますが、血流によってすぐに全身へ移行するため、単独では持続時間が短いという欠点があります。

アドレナリンの役割

アドレナリン注射

アドレナリンは副腎髄質ホルモンで、主にα-アドレナリン受容体への作用により血管収縮を誘導します。そのため局所麻酔薬に入っていることで

・局所血流の減少:麻酔薬の吸収速度を低下させます。
・麻酔効果の増強、持続:単独で20〜30分の浸潤麻酔が、アドレナリン添加により60分以上に延長するので長時間の治療に有効になります。また、麻酔が効きやすくなるため、患者さんの苦痛が減少します。
・術野の出血抑制:特に外科処置や歯周外科で効果的

などの効果があります。

使用時の注意とリスク

注意点のイメージ

アドレナリンは少量でも全身に移行すれば以下のような症状を引き起こすことがあります。

・動悸
・頻脈
・血圧上昇
・発汗
・不安感
・頭痛
・手指の震え(振戦)

これらは特に、麻酔薬が血管内注入された場合や、高濃度・過剰使用時に症状が出やすいです。症状は一時的なことが多いです。

禁忌または慎重投与が必要な場合

以下の患者さんには特に注意が必要です。

・高血圧症(特にコントロール不良の人)
・狭心症、心筋梗塞の既往がある人
・不整脈
・甲状腺機能亢進症
・糖尿病(血糖上昇の可能性)
・MAO阻害薬、三環系抗うつ薬使用中

これらの患者さんには、発作が起こりやすくなる可能性があるためアドレナリン無添加の麻酔を選択することが推奨されます。

迷走神経反射について

体調が悪くなった女性

麻酔薬に含まれるアドレナリンの効果で体調が悪くなることが多いですが、そのほかにも治療中に迷走神経反射を起こすことがあります。

迷走神経反射は、自律神経系に関わる代表的な反射の一つであり、日常診療の中で遭遇する機会も少なくありません。

特に歯科医療の現場では、治療中あるいは治療直後に突然、顔面蒼白、発汗、血圧低下、徐脈、さらには意識消失(失神)などが起こることがあり、迅速かつ適切な対応が求められます。

迷走神経反射とは、副交感神経の一部である迷走神経の過剰な刺激によって引き起こされる反射性の血管迷走神経反応です。

通常、交感神経と副交感神経のバランスによって自律神経機能は保たれていますが、極端な精神的・肉体的ストレス、疼痛、恐怖、視覚的刺激(出血、注射など)などが引き金となり、副交感神経優位な状態が出現することで、血圧の低下、心拍数の減少が引き起こされます。

この反射が起こることにより、一時的に脳の血流が減少し、失神することもあります。

多くの患者さんは、歯科治療に対して「痛い」「怖い」というイメージを持っていると思います。

特に注射、抜歯、治療中の音、血の匂いなどが原因となり、ストレスが増大し、迷走神経反射が起きやすくなります。

また、局所麻酔注射時の痛み、歯を削っているときの不快感、長時間お口を開けていることなどがストレスとなり、反射を引き起こします。

また、診療前に食事をとっていなかったり、睡眠不足、脱水なども発症リスクを高めます。これらは血圧低下になりやすい条件であり、迷走神経反射を起こしやすいです。

また、長時間座っていたり、あおむけの状態での治療後、急激に起き上がった際に起こる起立性低血圧が反射の引き金になることもあります。

迷走神経反射の前兆として、以下のような症状が出現することがあります。

・冷や汗
・顔面蒼白
・悪心・嘔吐
・めまい・ふらつき
・視野狭窄
・徐脈
・血圧低下
・意識消失
・手の震え(振戦)

発症は急激であり、数秒から数分で意識を回復することが多いですが、失神中に転倒などをすると怪我をするリスクも高くなります。

まとめ

歯科医師

アドレナリンが入っている麻酔薬は、現代の歯科治療において不可欠な薬剤であり、無痛治療や低侵襲治療の実現に大きく貢献しています。

一方で、高齢化社会の進行に伴い、基礎疾患がある患者さんが増加しており、どの麻酔を選択するかはますます重要になっています。

むし歯など治療が必要になる前に定期的に歯科医院を受診してお口の健康を維持しましょう。

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